発毛剤のブランド名を挙げていただくと大抵の人は大正製薬の「リアップ」やアンファーの「スカルプD」を思い浮かべるのではないしょうか?
日本で知名度の高いこれらの発毛剤に共通しているのは有効成分「ミノキシジル」を配合していることです。
ミノキシジルは発毛や育毛にどのような効果があるのか、その具体的な効能を説明するとともにミノキシジルの副作用や使用する上の注意点を紹介します。
ミノキシジルの効果を検証
発毛効果が高く様々な発毛剤の主成分として配合されているミノキシジルとはどのような成分なのでしょうか。
ミノキシジルが及ぼす効果を中心に紹介します。
発毛有効成分ミノキシジルとは
ミノキシジルはもともと米国アップジョン社(現在のファイザー社)が血圧降下剤に配合するために開発された成分です。
この血圧降下剤を服用した患者に発毛や増毛の副作用が見られたため発毛剤としての研究が進み、1980年にミノキシジルを配合した世界初の発毛剤として「ロゲイン」が発売されました。
発毛成分としてのミノキシジルは現在90カ国以上から承認されており、効果に加え安全性も高く評価されていることが窺えます。
日本初のミノキシジル配合の発毛剤は1998年に発売された大正製薬のリアップです。
ミノキシジルがどのように発毛に効果を発揮するのか
もともと血圧を下げるために使われていたミノキシジルはなぜ発毛に効果を発揮するのでしょうか?その理由を検証します。
頭皮の血行を改善し発毛・育毛を促進する
まずが頭皮の血行が改善するためです。ミノキシジルは血管を拡張する働きを持ちます。
血管が拡張すると血流が向上し、血流が良くなると毛根に栄養や酸素を届きやすくなります。その結果、毛母細胞が刺激され発毛を促します。
毛乳頭細胞を増やして発毛する
毛髪は毛乳頭細胞が増殖し毛髪の主成分であるタンパク質が合成することによって成長します。
ミノキシジルは細胞を増やしタンパク質を合成する働きも持つため毛乳頭細胞が分裂しさらに成長させます。毛乳頭細胞が増えればより多くの毛髪が生み出されます。
ミノキシジルが効果を発揮する人とは
脱毛のタイプは様々ですが、ミノキシジルはAGA(男性型脱毛症)、壮年症脱毛症の人に対して効果を発揮します。
ですので、病気やストレスなどが原因の脱毛(急激な脱毛や円形脱毛症など)には効果を発揮しませんし、抜け毛に悩んでいても家族や親戚に脱毛している人がいなければ壮年性脱毛症の可能性が低いのでミノキシジルは効果がありません。
別の成分の発毛剤の検討をおすすめします。
ミノキシジルはどのぐらいの割合で効果が実感できる?
ミノキシジルを使用した人がどのぐらいの割合で効果が実感できるのか気になる人は多いでしょう。
大正製薬のHPにはミノキシジル5%配合のリアップX5プラスネオの臨床データを公開していますが、長期投与した被験者はおよそ1年後(52週)には9割以上が何らかの効果を実感している、と発表しています。
ちなみに、世界的な発毛剤であるロゲインのHPにも「使用している男性の10人に9人が効果を実感している」と謳っています。
ミノキシジルはAGAや壮年性脱毛症の人には高い効果が期待できる成分、と言っていいでしょう。
ミノキシジルが効果を実感できる期間とは?
ミノキシジル配合の発毛剤は最低でも3か月は使用しないと効果が実感できません。
前述のリアップの臨床データでは使用して12週間後に効果を実感できたのはおよそ40%の人で、16週間後に効果を感じた人は60%でした。
ロゲインも16週以上の使用を推奨しています。短期間で効果を感じることは難しいとお考え下さい。
ミノキシジルの効果を実感するのに最低3か月必要なのは、「ヘアサイクル」の改善に時間がかかるからです。
ヘアサイクルとは毛髪の発毛→成長→退行→脱毛の周期のことで、AGAや壮年脱毛症の人は毛髪が成長しきらないうちに退行期間に入り脱毛してしまいます。
このようなヘアサイクルの乱れをミノキシジルは改善するのですが、乱れたヘアサイクルの改善には3か月~6か月を要します。
ミノキシジル配合の発毛剤やミノキシジル以外の有効成分はどのようなものがある?
ミノキシジルの効果を解説しました。
それでは、ミノキシジルが配合されている発毛剤はどのようなものがあるか、また、ミノキシジル以外に発毛に有効な成分はどのようなものがあるかを紹介します。
ミノキシジル配合の発毛剤を紹介します
ミノキシジル配合の発毛剤は多くのメーカーから発売されていますが、日本国内で購入する際には医師の処方もしくは薬剤師の指導がないと購入できません。
ミノキシジルが配合されている外用薬と内服薬の代表的な商品を紹介します。
外用薬
まずはミノキシジル配合の外用薬、塗布するタイプの商品を紹介します。
世界的にもっとも有名な商品は現在ジョンソン・エンド・ジョンソン社から発売されている元祖発毛剤の「ロゲイン」で、日本でもっとも名の知られているのは大正製薬の「リアップ」です。この二つの商品は高い販売実績と信頼性を持つ商品です。
ロゲインやリアップも発売開始から時間が経過しているため、多くのメーカーからジェネリック(後発品)が発売されています。
CMでおなじみのアンファーの「スカルプD」もその一つです。ジェネリックは後発品ではあるもののロゲインやリアップと成分は同様なので本家と比較しても効果に差はありません。
経口薬
ミノキシジル配合の内服薬を服用すると外用薬より発毛効果が高いと言われています。
ミノキシジルが血管に作用する働きを持つため当然のことと言えます。
しかしミノキシジル配合の経口薬は発毛剤としてはどの国からも認可されていません。ミ
ノキシジル配合の経口薬として最も有名なのはファイザー社の「ロニテン」ですが、ロニテンもあくまでも血圧降下剤としての医薬品です。
ミノキシジル配合の経口薬がなぜ発毛剤として認められていないのは副作用のリスクが高いからです。
AGA治療クリニックではミノキシジル経口薬の案内をしていますが、医師から処方された医薬品でも、発毛剤として認可されたものではない、ということは覚えておいたほうがよいでしょう。
ミノキシジル以外の発毛有効成分とは?
ミノキシジルはもっとも有名な発毛の有効成分ですが、この他にも医薬品に採用されている有効成分があります。参考までに成分とその効果を紹介します。
フィナステリド
フィナステリドはアメリカのメルク社が開発した、もともとは前立腺肥大の改善に使用されていた成分です。
男性ホルモンの一種、テストステロンが毛髪のヘアサイクルの成長期を短縮する悪玉男性ホルモンに変化することを阻害し、脱毛を防止する働きを持ち抜け毛に効果的な成分です。
フィナステリドは男性ホルモンに作用する成分のため、性欲減退や男性機能の障害などの副作用があります。
デュタステリド
デュタステリドはフィナステリドと同様に男性ホルモンに働きかけ脱毛を抑制する成分です。
フィナステリド以上に悪玉男性ホルモンへの変化を阻害する作用を持ちます。
フィナステリド以上に強い効果を持つため、副作用もフィナステリドより起きる可能性が高くなります。
発毛剤を併用する際の注意点
ミノキシジルは発毛を促進し、フィナステリドやデュタステリドは脱毛を抑えるという効果を持ちます。
AGA治療を行っているクリニックではそれぞれの成分の特徴を活かすために2種類の発毛剤を併せて処方することもあります。
症状によっては発毛や育毛の効果を高めることができますが、いずれも副作用の可能性がある成分なので場合によっては無視できない副作用が起きる可能性あります。
異なる成分の発毛剤を併用したい場合は必ず医者に相談して適切に処方してもらいましょう。
ミノキシジルで想定されるリスク
ミノキシジルは医薬品に配合されている成分です。
医薬品には必ず副作用のリスクがあることを認識しなければいけません。ミノキシジルを使用することによって生じる可能性のあるリスクを紹介します。
ミノキシジル配合の外用薬は安全です。
ミノキシジルを配合している外用薬、いわゆる塗布するタイプの商品は正しく使えば基本的には安全です。
軽微な副作用が起きる可能性はありますが重篤な副作用が起きることはほぼありませんのでご安心ください。
一般的に販売されている発毛剤は品質、安全性ともに公的機関の厳しい審査基準をクリアしていますし、さらに数多くのメーカーが発売し多くの販売実績があるものの大きな副作用の報告がほぼない、ということがその理由です。
ミノキシジルの副作用とは?
ミノキシジルによって起きる可能性のある副作用の症例を紹介します。
前述した通り外用薬は重篤な副作用が起きる可能性はほぼないと言っても差し支えなく、もし重篤な副作用が起きるとすれば「内服した場合」です。
初期脱毛
ミノキシジルだけではなく、発毛剤や育毛剤を使い始めてしばらくすると抜け毛が増えた、という症状が出る人がいます。
しかしこれは初期脱毛と呼ばれる症状で副作用ではありません。
AGAの原因にヘアサイクルの乱れがありますが、ヘアサイクルが整ってくると健康な毛髪が発毛し成長が止まった毛髪が抜け落ちます。
初期脱毛とはこのように一時的に脱毛が増えた状態です。初期脱毛は育毛剤や発毛剤が効果を発揮している証拠ですのでご安心ください。
皮膚の疾患
ミノキシジル配合の外用薬を使用すると頭皮のかゆみやかぶれ、赤み、ふけが増えることがあります。
これはミノキシジルをはじめその発毛剤に配合されている成分のうち何らかがアレルギーを起こしていることが考えられます。
しかしこれはどの発毛剤でも起きる可能性があります。ミノキシジルに限った話ではありません。
心臓が影響を受けることによって起こる副作用
ミノキシジルを服用すると血管が拡張します。
血管が拡張すると血流が変わるため、血管や心臓が影響を受け、副作用を引き起こすことがあります。
具体的には血圧の急激な低下によるめまい、動悸や息切れ、胸の痛み、頭痛(脳への血流の変化が起きるため)です。
場合によっては不整脈や狭心症といった重篤な副作用が起きることもあります。
腎臓が影響を受けることによっておこる副作用
ミノキシジルは腎臓にも負担をかけるため腎機能が低下することもあります。
腎機能が低下すると代謝機能が落ち水分が体外に排出されにくくなり、むくみや急激な体重増加といった副作用を引き起こすことがあります。
代謝機能が落ちると老廃物や毒素も排出されなくなるのでむくみや体重増加は危険な状態とお考え下さい。
ちなみに、医師が血圧降下剤としてミノキシジルを処方する場合、利尿剤も併せて処方することもあります。
多毛症
ミノキシジルを服用すると毛髪だけではなく全身の毛が増えた、濃くなった、という人もいます。
重篤な副作用とは言えませんが、身体の毛が必要以上に濃くなるのが気になる人はいるでしょう。
ミノキシジルを使用する際の注意点
ミノキシジルの副作用を紹介しました。最後に、ミノキシジルを安全に使用するための注意点を紹介します。
ミノキシジルをおすすめしない人
ミノキシジルの使用をおすすめしないのは、女性と未成年、高血圧(もしくは低血圧)の人です。
女性や未成年は日本においてミノキシジルの安全性が証明されていません。女性はミノキシジルの配合率が低い女性用のリアップやロゲインがあるのでそちらの使用を検討してください。
また、ミノキシジルはもともと血圧降下剤に配合されている成分なので高血圧/低血圧の人もおすすめしません。
さらに心臓や腎臓に負担がかかるので心臓や腎臓に疾患を持っている人も同様です。検討している人は医師に相談しましょう。
併用してはいけない薬
ミノキシジルは血管に作用する成分のため、同様の働きを持つ医薬品は併用を避けたほうがよいでしょう。
急激な血圧低下を招きめまいやふらつきなどを起こす可能性があるからです。具体的にはED治療薬や鎮痛剤など、血管を拡張する、または血流を良くする医薬品です。
使用する量には要注意
ミノキシジル配合の外用薬の一回の使用量は1mlです。
使用量として少ないと思われるかもしれませんが用量はしっかり守りましょう。多く使えば効果が出るというわけではありません。
また、経口薬に関しては一錠あたりミノキシジルの配合量が1mg~10mgと様々な種類がありますが、ミノキシジルの含有量が多ければ副作用のリスクも高くなります。
一日に摂取する量は5mgまでが基本ですのでご注意ください。
個人輸入は自己責任で
現在、日本では承認してされていない海外の医薬品を個人輸入代行のサイトで低価格で、手軽に購入することができます。
しかしいくら低価格でも個人輸入で購入した商品には品質の保証はありませんし、模造品や偽造品が送られてくるかもしれません。
そのような被害にあっても泣き寝入りするしかなく、しかも副作用が起きた場合も自己責任なので十分に注意してください。
まとめ
ミノキシジルの効果やリスクを紹介しました。
ミノキシジルは数少ない発毛効果のある有効成分です。
髪の悩みを持つ人には救世主のような成分と言えるかもしれません。しかし効果のあるものには必ずリスクもあります。正しく使用しましょう。